初のIPO当選と祭りのクジ屋の思い出
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最終更新日:2013/12/11
IPO
祭りのクジと同じくらい当たらないと思っていたIPOについに当選。SMBC日興でシグマクシス、マネックス証券で足利ホールディングスと連続して二つのIPOに当選してしまった。
思えば、長いようで短い道のりだった。
子供の頃、どうしても欲しいファミコンのソフトがあった。しかし、そんな高額なおもちゃを買ってもらえるのは何らかの記念日のみ。お年玉が親の口座に全額納入されていた私にとって、ファミコンソフトを自分で買うなんて夢のまた夢。そこで私は祭りのクジ屋に目をつけた。
「ファミコンソフト沢山入ってます!」何とそのクジ屋では50番より小さい数字が出れば必ずファミコンソフトがもらえるらしい。「こんなに美味しいクジがありえるのか?」どう見ても100枚も残っていないと思われるクジを見て、小学生ながら疑問を感じたが、私は迷わず2枚のクジを購入した。
「あー残念!55番と58番!はい!ファミコンの消しゴムね」
私が欲しかったソフトとは程遠い、紫色の5cmくらいの小さな消しゴムが2個当たった。片方は忘れたが、片方はスパルタンXの消しゴムだった。
しかし、そこで私は引き下がらなかった。「クジの残数は明らかに少ない。これなら買い続ければ絶対当たるはず。だって50番以内で良いんだし。」自分に言い聞かせるようにブツブツ言いながらもう一枚のクジに手を伸ばそうとした瞬間、ふと名案が浮かんだ。
「これ、クジが減るまで監視してれば良いんじゃね?」
クジ屋が出ているのは、日頃から頻繁に遊びに来ている神社だ。隠れていたら、皆がいつの間にか帰っていることもしばしばあるくらいかくれんぼの得意な私にとって、気づかれずに監視する事など造作も無い。ということで、建物の下に身を潜めて監視をすることにした。
監視を始めて2時間、「50番より小さい数字ならOK」「ファミコンソフト沢山」につられて、次々とクジは売れていった。祭りのクジ屋には珍しいレベルの盛況ぶりだ。大人の客もかなり居る。しかし、結局ファミコンソフトを手に取る人は現れなかった。
そこで一つ大きな問題に気づいた。
「クジが全然減ってない」
これは絶対に何か不正をしている。そう確信した私はクジの番号に注目した。かなり距離があったが、店主が毎回「あー残念!55番ね!」と番号を叫ぶので番号を確認するのは簡単だった。・・・55番?
そう、さっき私が引いたクジの番号と同じ番号だ。私は番号に重複はないと思っていたため、「残数も少ないし、ハズレが出尽くしてから買いに行けば当たるはず!」と考えていたのだが、ハズレが出尽くす事などありえなかったのだ。最初から、51番~99番のクジが延々補充されていただけだった。
長い監視と大人の悪意に疲れ果てた私は、再度詐欺クジ屋に向かった。
「1枚下さい」
当たりクジが入っていない事は今までの監視でわかっている。だが、子供心にどうしても納得がいかなかった。何で大人が、自分より間違いなく沢山お金を持っている大人が、自分のような子供を騙すのか。本当に当たりは入っていなかったのか。
「あー64番ね!残念!だけどもう店片付けちゃうから特別にこれ!」
そう言って、店主は吊るしてあったファミコンソフトを私に渡した。
馬鹿な。そんな。ありえない。今まで誰も当ててなかったじゃないか。何で急にそんな。
私は混乱したままファミコンソフトを握り締めて家に帰った。父は私の持ち帰ったファミコンソフトを見て「お!クジで当たったのか!凄いな!」と喜んだ後、「これは酷いな」と顔をしかめた。ファミコンソフトの箱の中には、本物と同じプラスチックの内箱、そしてその中にスパルタンXの消しゴムが入っていた。
私はそれ以来、祭りのクジを1度も引いたことが無い。